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【日本】改正組織犯罪処罰法(共謀罪、テロ等準備罪)について知る
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(最終更新: 07-12-2017, 11:12 PM by 十牛.)

【日本】改正組織犯罪処罰法(共謀罪、テロ等準備罪)について知る





 2017年6月15日に「改正組織犯罪処罰法案」が成立した。メディアでは共謀罪法案、あるいはテロ等準備罪法案と書かれていることもある。国民の中には「監視社会になる」であるとか、「一般人が捜査対象にされる」という懸念をもつ人も多いと聞く。そこで今回はこの法案について、少し詳しくみていこう。


※はじめに
 この法案に対する大手新聞各社のスタンスは、賛成派と反対派で大きく分かれている。この法案によって新しく設置される罪を、反対派の朝日と毎日は「共謀罪」と呼び、賛成派の読売と産経は「テロ等準備罪」と書いている。ちなみに日経新聞は「共謀罪」で、NHKは「テロ等準備罪」だ。
 「共謀罪」とは、犯罪が実行される前の計画の段階で(共謀した段階で)罪になるというものだ。これだけをみると、やたらと乱暴で、私たちの権利を極度に侵害するもののように思えるが、世界の多くの国に共謀罪に類するものがある。このあたりの情報も載せておくので、読んで判断材料にしていただければ幸いである。
 それで今回の法案をみると、「共謀罪」とは違う部分があるし、「テロ等」というように対テロに特化しているわけでもなく、どちらも不正確だ。もしネーミングできるなら「組織犯罪準備罪」や「組織犯罪予備罪」とでも付けたいが一般的ではないため、この記事では「テロ等準備罪」とさせていただく。また、違いについてもわかりやすく書いてみたい。






【1】現行法、共謀罪、テロ等準備罪の違い

 共謀罪とテロ等準備罪の違いは以下のようになる。大きな変更点はこの3つである。



<共謀罪とテロ等準備罪、3つの大きな変更点>
  
    共謀罪     テロ等準備罪

<あ> 対象が団体 → 組織的犯罪集団に限定
<い> 犯罪の共謀 → 実行の準備行動をしたときに限定
<う> 676の犯罪  → 277の犯罪

※殺人罪、強盗罪、監禁罪などの禁固4年以上の重大犯罪に絞り込んだ。



 <あ>については、共謀罪ではあらゆる団体が対象であった。しかしあまりにも範囲が広すぎるという批判が噴出した。そこでテロ等準備罪では、暴力団、テロ組織、詐欺集団などの犯罪集団に限定した。詳細については次の【2】で説明するが、犯罪組織でない団体には関係がないものだ。また罪に問われるのは、犯罪計画に参加していた人物だけであって、たんに所属しているだけでは罪に問われない。
 次に<い>について説明したいが、組織犯罪が実行されるステップは以下のようになる。爆弾テロを例にとってみよう。なお、今回の法案は複数での犯罪を対象にしており、単独犯は含まれない。


<1> 犯罪の計画
爆弾テロを皆で計画
   ↓
<2> 犯罪の準備行為
現場の下見、車の手配、爆弾の材料の購入など
   ↓     
<3>犯罪の実行
爆破を実行



 まず、現行法では多くの犯罪が、<3>の犯罪の実行(既遂)をもって罪となる。基本的には犯罪が起こってからしか罪に問えないため、事前に阻止することが難しい。これに対して「共謀罪」では、<1>の段階で、犯罪として逮捕してしまう。しかしこれには「実際に罪を犯してもいないのに、考えただけで罪になるのか」という批判があった。そこでテロ等準備罪では、誰かが<2>の段階に着手した段階で犯罪になるとした。計画だけでは犯罪とはならず、実行するための具体的準備に取りかかることで犯罪となるわけだ。
 このことによって、テロ等準備罪で罪になるタイミングは、共謀罪よりは遅くなる。とはいえ「犯罪を実行していなくても罪になる」のは事実だ。そもそも共謀罪やテロ等準備罪の目的は、犯罪やテロが実行される前に犯人を拘束することにある。本来ならば犯行が行われてから逮捕すればいいのだが、組織的な犯罪やテロ等が実行されてしまえば、国民は取り返しのつかないダメージを受ける恐れがある。そこで実行前に阻止しようというのが、共謀罪やテロ等準備罪の考え方だ。
 最後に<う>についてだが、もともと共謀罪では676の犯罪が対象であったが、テロ等準備罪では277の犯罪に絞り込んでいる。具体的には、殺人罪、強盗罪、監禁罪などの禁固4年以上の重大犯罪に限っている。これらの犯罪は実行されれば最高刑は死刑や無期懲役まであるが、テロ等準備罪では実行前に逮捕するため、当然以下のように減刑されることになる。

・懲役10年以上の犯罪については、5年以下の懲役または禁錮。
・懲役4年以上の10年以下の犯罪については、2年以下の懲役または禁錮。







【2】テロ等準備罪となる具体的なケース
 
 説明だけではイメージできないと思うので、実際の例をあげてみたい。

<例1>宗教団体が教義にもとづき、武力闘争を目指すようになり、武器の製造を始めた。

<例2>テロ組織が繁華街に車で突入するテロを計画し、メンバーがワゴン車を借りた。

<例3>テロ組織が東京五輪の会場に航空機で突入するテロを計画し、メンバーが航空券を予約した。

<例4>テロ組織が東京のインフラをマヒさせようと計画し,メンバーが電力会社を攻撃するコンピューターウイルスの開発を始めた。

<例5>暴力団が対立組織の幹部暗殺を計画し、拳銃を入手するための資金を用意した。

<例6>詐欺集団が、電話を使って現金を振り込ませる特殊詐欺を計画し、拠点となる部屋を借りた。



※以下のようなケースは、テロ等準備罪にはならない!

<例1>会社の同僚が飲み会で「上司を殺してやろう」と意気投合し、インターネットで上司の自宅を調べた。

<例2>環境保護団体が工事現場での座り込みを計画し、現地までの電車の切符を予約した。

<例3>民間企業が脱税を計画し、経理課で裏帳簿を作成した。



 テロ等準備罪になるのは、「組織的な犯罪集団」のみである。テロ等準備罪にならない3つの例をみると、いずれも主語が犯罪集団ではないことがわかる。会社、環境保護団体、民間企業はどれも犯罪を生業としているわけではないので、実行の準備行動をしただけでは罪とならない。また労働組合や基地移転反対などの各種のデモも、今まで通り行って問題ない。「市民運動を萎縮させる」などという主張があるようだが、市民団体は犯罪組織ではないので、活動になんの問題もない。
 テロ等準備罪が適用されるケースでは、問題となりそうなのが<例1>の宗教団体だ。むろんごく一般的な宗教団体は、犯罪集団ではない。しかし、かつてのオウム真理教のように、サリンをつくったり、銃器を製造したりして「テロをたくらむ集団に変質」すれば、テロ等準備罪が適用されるようになる。反対する人々が懸念しているのは、オウム真理教を例にとれば、平和的なヨガ集団からテロ組織に変わる場合の、境界の定義があいまいだという点だ。そのため、権力側が自分達に不都合な考えの人間を取り締まるのではないか、と不安を持つ人々がいる。ただ、世界の多くの国で共謀罪に類する法律がある。下記を参考にして欲しい。

アメリカ共謀罪(連邦法第18編371条)
イギリス共謀罪(1977年刑事法第1条、及び第3条)
ドイツ 犯罪団体の結成の罪(刑法第129条) 
フランス凶徒の結社罪(刑法第450ー1条)


 OECD(Organisation for Economic Co-operation and Development = 経済協力開発機構)というのは、国連の中でも先進国がほとんどなのだが、35の加盟国のうち、共謀罪と参加罪をもっている国は以下のようになる。参加罪というのは、犯罪集団に参加し、直接犯罪に関わらなくても犯罪集団の利益になるような事を、本人が自覚した上でやれば罪になるというものである。参加罪も実際に犯罪を実行しなくても罪になるわけだ。

共謀罪だけがある国7ヵ国
参加罪だけがある国13ヵ国
2つともある国  14ヵ国
2つともない国  1ヵ国


 この一番下の「2つともない国」が我らが日本である。もし共謀罪や参加罪を設置しただけで、ただちに「監視社会」になったり「一般人の自由が制限される」、「密告社会になる」のであれば、日本以外は全部そうだということになってしまう。その可能性がゼロとはいわないが、あまりにも極端な主張だろう。大事になってくるのは具体的な法整備や運用である。マスメディアの報道や国会での議論を見ていると、「共謀罪は危ない、やめろ!」という入り口部分で議論が止まっていたのが非常に残念だっだ。



※次回に続きます・・・
引用返信
#2

(最終更新: 07-15-2017, 11:51 AM by 十牛.)

【3】テロ等準備罪の問題点
 
 共謀罪もそうだが、テロ等準備罪も、犯行が実行される前に犯罪者として逮捕してしまう。このことが、いわゆる「内心の自由」を侵すのではないか、という指摘がある。
 例えば、ある組織がテロを行う計画を立てたとする。車の手配など準備行動も行った。ところが途中で、やっぱりこんなことはやめようとなったとする。この場合でも、計画と準備行動という条件を満たしているから、テロ等準備罪は成立する。むろん以上のことに加えて、この組織が犯罪を目的としている集団である必要があるのだが。 
 日本国憲法では、個人の思想や信条は自由であり、最大限尊重されるべきものだとしている。

日本国憲法第19条
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。


 憲法のこの条文を根拠として、「実際に犯罪を犯して人々に損害を与えたわけでもないのに、罪に問うのは問題なのではないか。」、あるいは「心の中でどんなに凶悪な事を考えても、それは自由じゃないのか。考えただけで罪に問われるのか。」という主張がある。
 実際、日本の多くの刑事法では実行(既遂)をもって処罰する。ただし、殺人や強盗、爆発物を用いた犯行、放火、通貨偽造、内乱、外患などについては、準備をしただけで罪になる予備罪が現行法においても存在する。これらの犯罪については、社会に重大な事態を引き起こす可能性があるためで、日本の刑法においても、予備段階で犯罪と考える思想が全くないとはいえないのである。
 結局は犯罪組織が計画を立て、準備行動をしたら取り締まったほうがいいのか、あるいは、それよりも国民全体の「内心の自由」を優先すべきなのか、というバランスの問題になってくる。国民の自由を制約するようなものは、なるべくない方がいいに決まっている。その一方で、テロや組織犯罪を脅威と考える人々は、組織犯罪対策としてテロ等準備罪を定め、世界標準に合わせていくべきだといった考えをもっている。





【4】通信傍受(盗聴)が拡大する可能性

 テロ等準備罪における別の懸念は、通信傍受(盗聴)の拡大である。たとえばテロを防ぐには、事前にテロの情報を得なくてはならない。そのために、最も現実的なのは通信傍受(盗聴)である。残念ながら金田法相が国会答弁していたような「捕まえていた犯罪者が、ポロッと犯罪計画をしゃべる」ようなことはほとんどないだろう。
 ここで一口に通信傍受(盗聴)と言ったが、いろいろな分類があるので、まずは簡単に説明する。現在日本で行われているのはワイヤータッピング (wire tapping)というもので、電話や電子メール、FAXなどの内容を把握するものだ。その名の通り、電話線(wire)に傍受装置を接続して情報をとる。これに対して、バッギング (bugging) というのがいわゆる盗聴で、室内や車などに盗聴器を仕掛けて会話を録音する。バッギングは日本では一切認められていない。こちらの方が、プライバシーの侵害が大きくなるが、犯罪情報を得られる確率も高くなるのは言うまでもない。先進国では、バッギングも認めている国が多い。傍受件数も日本とはケタ違いである。以下に少し古いが、2012年の各国のデータがあるので参考にして欲しい。

警察庁ホームページ2012年における、各国の傍受比較
https://www.npa.go.jp/hakusyo/h26/honbun...10000.html


 また、日本では通信傍受を行うには、裁判所の令状が必要である。司法の許可が必要なので、これを司法傍受という。しかし日本では、すでに起こった犯罪か、十分な理由がないと傍受できない仕組みで、他にも厳しい制約がいろいろと付いているため、傍受件数は非常に少ない。 
 これに対して、裁判所の令状を必要としない行政傍受というものがある。世界各国でテロや犯罪の防止に使われているのは、主にこちらのほうだ。しかし「捜査機関自身が、自ら傍受の許可を出す」ので、運用に気をつけないと、乱用されてしまう恐れがある。現在ドイツ、フランス、イタリア、イギリス、アメリカ(テロなどに限定)などで行われており、捜査機関が「こいつら危なそうだな」と判断すれば、予防的な行政傍受がOKになっている。もちろん日本では、行政傍受は一切認められていない。日本人の感覚でいえば「そんなに捜査機関に好き勝手をさせて大丈夫なのか?」と驚くと思うが、世界と日本を比べてこのような大きな差があるのは、少なくともテロ等に関して、これまで日本がいかに安全だったかということだろう。しかし今後、必ずテロ対策としての「行政傍受」が議題にのぼってくると思う。現在の日本の「司法傍受」では、テロや犯罪を未然に防ぐという意味では、ほとんど役に立たないからだ。恐らく日本人は大きな事件でも起こらないかぎり、「行政傍受」をなかなか認めないように思うが、もし導入するなら、きちんと捜査機関に対して歯止めがかかるような仕組みづくりが必須である。
 また、以下に2016年(1月~12月)に日本で通信傍受を行った件数を掲載する。これは法令によって年1回情報公開が定められているデータだ。令状を請求したのはわずか40件で、33人の逮捕者がいるが、いずれも明確な犯罪である。まことしやかに書かれている「1億総監視社会」などというフレーズが、なんの根拠もないことがわかるだろう。政治家やメディアは、国民により正確な情報を発信してほしい。第一、1億人分の令状など、どうやって取るというのか。もっとも、政府や捜査機関があるとき変質することがないとはいえないから、引き続き、国民がしっかり見ていくことが大切だ。より詳細を見たい場合は、以下のアドレスをチェックし、PDFファイルを読んで欲しい。

警察庁ホームページ2016年(1月~12月)に日本で行われた通信傍受
https://www.npa.go.jp/sousa/kikaku/h29boujuhoukoku.pdf



    罪名        傍受令状請求数 逮捕者

<1> 覚醒剤取締法違反  5       13
<2> 覚醒剤取締法違反  3       7
<3> 覚醒剤取締法違反  3       0
<4> 覚醒剤取締法違反  1       4
<5> 銃刀法違反     2       0
<6> 銃刀法違反     2       0
<7> 銃刀法違反     8       6
<8> 銃刀法違反     3       3
<9> 麻薬特例法違反   1       0
<10> 組織的な殺人    7       0
<11> 電子計算機使用詐欺 5       0

    合計        40       33



※次回に続きます、テロ等準備罪と治安維持法を比較します・・・
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